事例集

譲渡事例

他社では売却不可と言われるも3年間一緒に粘って、無事承継することができたクリニック

案件概要
クリニック名 かねこクリニック
クリニックHP https://www.hallelu.or.jp/kanekoclinic
譲渡者 金子光延先生
 所在地 神奈川県川崎市宮前区馬絹4丁目4−13
 診療科目 小児科、内科
初回面談日 2018年6月
最終契約日 2021年8月
譲受者 医療法人社団晴琉会
譲渡スキーム 個人開設クリニックの事業譲渡
 担当コンサルタント 髙淵信行
 案件の特徴 クリニック売却後も金子先生は医療法人の院長として継続勤務

 

Q1、譲渡契約締結後、現在のお気持ちはいかがでしょうか。

金子先生:

はい、とてもほっとしています。もしも譲渡を諦めて、クリニックを閉院してしまうと地域住民の皆様にご迷惑をおかけしてしまい、後悔すると考えていました。譲渡成立まで本当にいろいろな出来事がありましたが、最後まで立ち塞がる問題を、譲渡先の医療法人社団晴琉会様(以後、「晴琉会」)と髙淵さんと一緒に乗り越えて、最終的に無事に譲渡できることになりました。良い形で地域医療を残せることにほっとしています。

 

 

 

Q2、譲渡を考えたきっかけについてお話しください。いつ頃から検討されたでしょうか。

金子先生:

2018年頃から、将来は国境なき医師団などで医療活動をしたいなど、自分の将来について少しずつ考えるようになりました。ただ、医師会の仕事が2021年まであったので、それまではゆっくり「良い人がいれば」という感じで後継者探しをしようと考えていました。

 

 

Q3、事業承継するなかで閉院を考えたことはありましたか?また、それをどのように乗り越えましたか。

金子先生:

はい、何度もありましたし、その中でも3回ほどは強く考えました。

1回目は、2020年4月に門前薬局が数か月後に閉局すると決まった時です。数カ月の間に次の調剤薬局を見つけなければ事業承継が難しいと考えていました。この時は、譲渡先として候補に挙がった医療法人が、院内処方を検討してくれていたため、そちらの話を進める形での解決を図りました。

2回目は、2020年8月から交渉していたその譲渡先候補の医療法人との話が破談になったときです。こちらの法人とは譲渡も決まり、院内処方での開設準備を進めていたのですが、同年12月に諸般の理由で話が無くなってしまいました。この時は、急いで調剤薬局の誘致を行い、幸いにも一緒にやってくれる薬局が見つかったため閉院の危機から逃れました。

3回目は、今回、晴琉会との譲渡契約が決まったタイミングで、入居していたテナントのオーナーが変更となり、譲渡をしても晴琉会が入居できない可能性が発覚しました。何とか入居の許可をいただいた後も、賃料などの条件面の変更などもあったので、譲受を断られてしまうのではと思っていました。この時は最終的に今回の晴琉会が、新しいテナントオーナー様からの提案の賃料条件を承諾していただき、閉院の危機から逃れることができ、譲渡をすることができました。

 

そして何より、いずれのときも閉院を考えた時に多くの患者さんから、「なぜクリニックを辞めるのか」と聞かれ、胸が苦しい思いをするとともに、地域住民の皆様の為に、医療を残していかなければならないと考えてこれたことで、閉院の危機を乗り越えることができたと思っています。

 

 

Q4、譲渡される上で 金子先生が一番重要視したポイントを教えてください。

金子先生:

今回、一番重要視したのは「誰に」譲渡するのかということです。

先程お話しした通り、今回、晴琉会の前に、一度別の医療法人と譲渡契約締結まで進みましたが、諸般の事情がありその譲渡は破談となってしまいました。

この時失敗して思ったのが、「誰に」譲渡するかがとても重要ということです。相手の想いやお人柄を無視して、譲渡の条件や時期だけを重視して話を進めていくと、1回目と同じになってしまうと考えていました。

 

 

今回、晴琉会の理事の田島様は譲渡価格などの条件の話よりも、まずは、このクリニックでどのような医療を提供していくかを優先して話していらっしゃいました。また私との対話も大事にしながら、物事を進めてくれたため気持ちが通じ合いました。こういう方とだから譲渡がうまくいったのだなと思います。

 

 

Q5、医院継承するまでの間 不安もあったと思いますが印象に残っていることはございますか?

金子先生:

担当してくれたコンサルタントの髙淵さんです。本当に最初から最後まで寄り添ってくれました。何度も閉院の危機がありましたがしっかりと対応してくれて、すごく助かりました。私と譲渡先である晴琉会のお互いをうまく取り持ってくれる担当者でした。

譲渡を考えた当初は別の会社にも相談をしていました。ただ、自分が長年診療してきたクリニックを手放すことは悲しい話であるのにも関わらず、その会社の担当者は譲渡対価や自社の手数料ばかりを重要視しているように見えて、次第にその会社の担当者には連絡しにくくなりました。M&A仲介会社には売主の気持ちを分かって救って欲しいなと思います。

 

今後、譲渡を考えている先生方には、お悩みや想いに対して、真摯に向き合ってくれるMA会社や担当者がどこかにいることを伝えたいです。一度きりの事業承継を相談するのであれば、良い担当者と巡り合って欲しいと思います。

 

 

 

Q6、譲渡先の医療法人である晴琉会の印象はいかがですか?

金子先生:

理事の田島さんのお人柄がとても良かったです。人がついてくるリーダーシップを発揮できるイメージです。コミュニケーションがとりやすいし、同じ目線で物事を考えられるので、とても交渉がしやすかったです。私は事業家の部分が弱いと感じていますが、田島さんは私の弱い部分を補ってくれて、今後勤務医として、ご一緒するに際してもお互い棲み分けがうまくできていて安心しています。

 

 

Q7、従業員の雇用継続についてどのように思いますか?

金子先生:

今回、従業員が辞めずに残ってくれるのですが、それも、晴琉会の皆様が譲渡の説明をとても丁寧にしてくださり、その他も多大なご協力があってからと思っています。その意味で私はとても恵まれていました。従業員としても今までの雇用条件で継続勤務できるようになったことは非常に良かったと思います。

 

 

Q8、継承をお考えになった時誰に相談されましたか、G.C FACTORYに相談したきっかけは?

金子先生:

最初はインターネットで検索した複数の会社と連絡をとりました。その際に、当時のクリニックの収益では買い手を見つけるのは難しいと言われたりもして、譲渡は難しいかなと考えていました。そのような時にG.C FACTORY(2018年当初は前身の株式会社メディカルノート)をネットで見つけて相談しました。

 

 

Q9、G.C FACTORYの対応はいかがでしたでしょうか?

金子先生:

先程の通りです。本当に満足しています。

 

 

Q10、譲渡後も院長として残られた理由は何でしょうか。

金子先生:

譲渡後に完全に引退するのは簡単でしたが、多くの地域住民から医療を続けてほしいという依頼があり、最後の責任として譲渡後も晴琉会に所属して、院長として続けようと思いました。今は院長としてしっかり診療を行っていき、軌道に乗せ、次の院長に診療を引き継ぐため、私がやるべきことをやろうと思います。

 

 

Q11、譲渡後に金子先生がやりたいことは、院長として残った場合でも実現できそうですか?

金子先生:

はい、今回の晴琉会とであれば、実現できそうです。

そして、現在、提供している医療だけではまだ足りないと感じており、自分自身の医療をブラッシュアップしていかなければならないと思っています。

今後も自分のできる医療を多くの方に求められる形で提供していきたいと思います。

 

 

Q12、譲渡をして半年間経ちましたが、かねこクリニックはいかがでしょうか。

金子先生:

譲渡後は患者さんも増え、収益が上がってきています。晴琉会の皆様と一緒に運営することで、今までよりも集患がうまくいっているのが理由だと思います。

特に、ホームページも一新し、問い合わせの電話が増え、地域住民からの認知度が上がった感覚がすごくあります。こうやってマーケティングなどを法人の方が行ってくださり、私が診療に専念できるのもありがたいと思っています。

 

 

Q13、事業継承をお考えの先生方に一言メッセージをお願い致します。

金子先生:

コロナ禍のこのような状況で辛い思いをしているかもしれないが、今までやってきた医療を理解してくれる方に巡り合って欲しいと思います。

そのためには、今までどのように医療をおこなってきて、それをどうしていきたいかというのを、M&A会社の担当者とよく話しをすることが大切です。

 

事業承継において、収益が大きく出ていないクリニックの場合は、譲渡価格が付きにくいと多くの方から言われます。ただ、こちらとしても例えば1億円で売りたいと思っているわけではないですし、譲渡価格の多寡ではなく、患者さんやスタッフの為にも安心できる人に引き継ぎすることの方が重要と思ったとしても、その気持ちが譲受先まで伝わらないことがあります。だからこそ、M&A会社の担当者ときちんと話しができお互いに理解できれば、良い譲り受け先が見つかると思います。

 

また、相手が医療法人の場合は、今回の私のように一定期間、院長や勤務医として継続することができれば、地域住民に迷惑をかけることもなく、次の院長に繋ぐことができます。時間がかかるかもしれませんが、良い事業継承サポートしてくれる担当者を探して、自分の夢を叶えてほしいと思います。

 

 

 

 

コンサルタントのコメント

 

初回の相談から譲渡成立まで3年ほどかかってしまい、この間に門前薬局の閉局、譲渡成立後の医療法人との契約の破談、入居物件オーナー交代など三度ほどクリニック閉院の危機がありましたが、何とか譲渡成立までたどり着くことができました。これは、金子先生と譲渡先の医療法人社団晴琉会様が協力し、譲渡後の新しい医療の提供をお互い共有できたからだと思います。

 

譲渡後、金子先生が継続して院長として診療を行い、晴琉会様が経営を行ってくれることで、理想的な体制が構築され、結果的にも従業員の雇用継続や、地域医療の継続に繋がることができました。

 

その結果、譲渡前より多くの患者さんが来院するようになり、売り手、買い手、患者さん、スタッフの四者が幸せになれる事業承継だったと思います。私としてもこのような案件に関われたことにとても感謝をしています。

 

以上

 

 

 

担当コンサルタント:髙淵 信行(たかぶち のぶゆき)

コンサルティング事業部 グループリーダー

経歴:国内医療機器メーカー、医師紹介会社、医療系コンサルティング会社、「(株)メディカルノート」コンサルティング事業部設立メンバーを経て、(株)G.C FACTORY 創業第一期メンバーに至る。医療系M&A・新規開業支援業務では、50件以上の成約実績がある。現在、コンサルティング事業部の大黒柱として内外問わず信頼は厚く相談多数。ライフワークはサーフィンと育児。

資格:M&Aシニアエキスパート(事業承継・ M&A エキスパート協会/運営:日本M&Aセンター)