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2020.06.09

クリニックの開業準備期間及び各実施事項について

G.C FACTORYの金子です。弊社のホームページをご覧いただいている方に有益な情報をお届けするべく、定期的にコラムを掲載させていただいております。本日は、以下のテーマについて記載をさせていただきます。

 

タイトル:クリニックの開業準備期間及び各実施事項について

 

目次:

1.序文

2.クリニック開業のためにかかるおおよその期間

3.クリニック開業するおすすめのタイミング

4.経営理念・診療のコンセプト決定

5.土地・建物の準備

6.開院資金の準備・到達

7.医療機器・設備の準備

8.届など行政の手続き

9.ホームページ作成など集客準備

10.スタッフの採用

11.まとめ

 

1.序文

開業」と一口に言ってもその準備の工程は膨大で多岐に渡ります。本稿では、その開業工程の各要所におけるポイントと長い医師生活のどのタイミングで開業をすれば良いかなど、開業に関する疑問に関して広く解説していきます。

 

2.クリニック開業のためにかかるおおよその期間

最初に開業にかかる期間について解説します。

 

(1)開業の工程の全体図

以下は開業の流れの全体図です。

図表:金子作成

※詳細な必要工程や順番は案件によって入れ替わりが生じます。

 

ご覧の通り、仮に「テナントを賃貸しての開業」「広さ30坪~40坪程度」「内装工事を施しての開業」という比較的都心部で見られるパターンを前提とした場合、物件が決定してから開業するまで5~6カ月ほどの期間がかかります。

 

(2)物件決定後のスピードが重要

5~6カ月という開業準備期間の設定において「物件決定後」をベンチマークに置いているのには2つ理由があります。

1つ目は、スケルトン(壁など何もできていないテナントの状態)からの開業の場合、全工程において[内装の設計→着工→竣工]という建築部分が最も時間を要するという点です。そのほかの準備(機器の購入・採用・マーケティングなど)は上記の建築部分の工程と同時に行っていきます。

つまり5~6カ月というのは開業の仕方によって異なるのです。具体的には、戸建ての開業では建物を建てる分の時間が増える一方、例えば訪問診療専門のクリニックや居ぬき(既に内装工事が施されている物件)での開業の場合ほとんど内装工事を行わなくてよいため物件決定後2~3カ月での開業が可能となります。

 

2つ目は、物件契約後は賃料が発生することが多いため、ここからは最短で準備を進める必要がある(つまり期間が読める)という点です。逆に言えば物件決定前はどれだけ時間をかけても問題はなく、長いケースでは2年間かけてゆっくりと開業地を決める先生もいます。

 

3.クリニック開業するおすすめのタイミング

次に長い医師人生の中でクリニック開業するタイミングはいつが良いかという点について解説します。

統計データを見ると、の平均年齢は少し古いデータですが41.3歳という数字が出ています。実際に弊社にお問い合わせいただく先生も30代後半~40代中盤までが多くこの統計と同様の感覚です。ただ、それが必ずしも開業するおすすめのタイミングとはなりません。

今回は弊社が支援をしていく中で先生方からお聞きした「もっと若いうちに開業をすれば良かった」という理由と「もっと経験を経てから開業をすればよかった」という理由を紹介します。

※出典:日本医師会 開業動機と開業医(開設者)の 実情に関するアンケート調査

http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20090930_21.pdf

 

 

(1)若いうちのほうが良い理由

若いうちに開業をすればよかったという理由には以下のような例があります。

〇固定資産を長期間活用できる点

〇金融機関などからの資金調達のしやすさや余裕をもった返済ができる点

〇事業や生活を保証する生命保険への加入した際の加入条件

〇長時間の診療や往診対応をやる体力

〇若いスタッフとのコミュニケーション

〇分院展開などの次のステップを想定した場合

〇次々に出てくるシステムやサービスへの順応

〇万が一失敗した場合の再就職の観点

 

最初の3つは実際に数字として結果に出るため、その傾向は確かにあります。しかしそれ以外の項目に関しては、そのように感じる先生がいるのは事実であるものの、50~60代からの開業でもうまく乗り越えている先生も多く見られます。

 

(2)経験を積んでからのほうが良い理由

次に経験を積んでからのほうが良かったという理由です。

 

〇経験が浅い状態において1人で診療をする際の不安感がある

〇より専門性の高い医療技術の習得できる環境は大きな病院のほうがある

〇診療所の単調な診療への物足りなさ

〇病院や医局との人脈の確立ができていない

〇同期など身近に開業や経営について相談できる人が少ない

〇患者さんや周辺開業医からの見え方(「まだ若い」と言われないか)

 

上記を見ていただくとわかると思いますが、具体的に“何歳が良い”とは言いきれない項目が多いです。これらを勘案した結果、30代後半から40代前半に開業を選択される結果が多いのだと思います。

また当然ですが今より若返ることはできないので、(2)の理由を確認したうえで「自分は後悔しない」と判断したらなるべく早く開業を選択されるのがおすすめです。

 

4.経営理念・診療のコンセプト決定

ここからは各ステップにおいて、留意点やどのくらいの期間を要するのかについて解説します。まずは、経営理念・診療コンセプト決定です。

 

(1)行う時期

開業準備の最初に行います。これによってその後の選択が変わるからです。

 

(2)期間

上述のとおり物件決定前なのでじっくりと時間をかけられるため、特に決まりはありません。また意識的に行うというよりは、これまでの日々の業務でさまざまな想いを感じる中で既に経営理念や診療コンセプトを完成されている先生も多いです。

 

(3)留意点

経営理念や診療コンセプトは自己満足で終わらずに「人に見てもらうもの」という意識をもつと良いでしょう。

経営理念・診療コンセプトはホームページ・採用媒体などに掲載をします。それを見ていただき、理解・共感した患者さんに来院してもらえるほか、スタッフに応募してもらいその後ミスマッチなく働いてもらうための重要な要素です。

よって、想いのこもった長文も重要ではありますが、それを人の印象に残る端的な言葉でまとめる必要があります。

 

5.開業物件について

次に開業物件についてです。今回は「賃貸物件の決定」「設計の留意点」というポイントに絞って紹介します。

 

(1)行う時期

経営理念・診療コンセプト決定後に行います。それによってエリア・開業形態・必要な部屋構成が全く異なるためです。

物件が決定したら設計に入ります。

 

(2)期間

物件は概ね2~3カ月で決定される先生が多いですが、良い物件との出会いは縁の要素もあり年単位で探している先生もいます。物件決定後の設計は1~2カ月で行う先生が多いです。

 

(3)留意点

開業物件を選ぶ際の留意点はとても多いため、医療機関の事情を理解した宅建士・経営コンサルタント・設計士などにも相談しながら以下のようなポイントをチェックしていきましょう。

 

【調査】

〇診療圏調査はしたか(周辺の医療機関の混雑具合も目視で確認をしたか)

〇朝・昼・夕それぞれの人通りを確認したか

〇競合医療機関の混雑状況を確認したか

 

【物件・契約書について】

〇医療機関が不可の物件ではないか

〇賃貸借契約書は確認したか(短期間の定期借家契約などではないか)

〇オーナーからの工事業者の指定はないか(工事区分表はもらったか)

〇契約前に工事を担当する設計士にも見てもらっているか

〇近隣に薬局はあるか

〇近隣に事業に害を与える施設はないか(小児科を予定している物件の横にキャッチセールスが激しい飲食店があるなど)

 

【設計】

〇医療機関経験のある設計士に頼んでいるか

〇何社かにコンペ形式で案をもらっているか

〇着工前に保健所に確認をしてもらっているか

 

6.開院資金の準備・到達

次に資金調達です。

 

(1)行う時期

物件が決まって設計や機器の概算の見積もりが揃った段階でおこないます。

 

(2)期間

審査は2~4週間(書類が揃って銀行員と面談をしてから)ほどかかります。融資は支払いのタイミングで都度融資の場合もありますが、手続きから実行まで1週間ほどかかるのが一般的です。

 

(3)留意点

過剰な融資は余計な金利を負担することになる一方、不足していると追加融資を受けなければならなくなるため慎重に進めなければなりません。

 

主な留意点は以下6点です。

〇医療機関での経験があるコンサルタントや税理士などに相談して計画を作成しているか

〇いくつかの金融機関に相談をしているか

〇団体信用生命保険が金利に含まれているかを確認したか(なければ自身で保険会社を探します)

〇申込金額は少し余裕をもたせているか(追加が必要となった場合は審査がやり直しになります)

〇融資審査にの通過に自信がない場合(既に多額の債務がある・過去に不払いを起こしたことがある・自費診療のみの診療の場合など)は、賃貸借契約書の締結の前に融資審査を受けているか(または賃貸借契約書に特約をつけてもらっているか)

 

7.医療機器・設備の準備

次に医療機器・設備の準備です。

(1)行う時期

機器の選定から研修までは以下のスケジュールになります。

〇大まかな選定と見積もり取得:

銀行融資の審査前・平面図確定前に行います。

〇価格交渉・内容の精査:

融資審査後から各機器の搬入が間に合うまでの間に行います。

〇搬入:

内装竣工後に行います。

〇研修:

開業の2~3週間前に行います。

 

(2)期間

期間は搬入する機器によって大きく異なります。各メーカーへの確認が必要です。

 

(3)留意点

〇コンサルタントや税理士などのアドバイザー・知り合いの開業医・現在のお勤め先の購買部などから情報を集める(価格の透明性が低い機器もあるためです)

〇リースの検討をする場合はリースの審査期間(概ね2~3週間)を加味しているか

〇卸から見積もりを取るかメーカーから直接見積もりを取るかを決めているか。

※前者は選定のアドバイスをしてくれたりデモのセッティングや見積もりの取得をしてくれたりする一方で多少の手数料は乗っていると考えるべきです。後者はメーカーとの交渉などを自身で行うことになります。

 

8.届など行政の手続き

次に行政手続きです。ここは個人開業を前提として解説いたします。

 

(1)保健所

保健所は主に医療機関の開設についての相談先となり、保険診療を行わないクリニックでは厚生局への手続きは不要となり保健所のみに届を出します。保健所は各市町村にあることが多く運用も多少自治体によって異なります。そのため事前に相談する必要があります。

 

主な実施事項と時期は以下3点です。

〇事前相談:

物件決定時の賃貸借契約書の確認・設計図面の事前確認・名称決定時などに行います。

〇開設届:

各自治体の保健所へ事前確認が必須ですが、開設後10日以内が一般的です。開設届・図面・管理者履歴書・医師免許証・賃貸借契約書などを提出します。

〇検査:

開設届の提出後に行う自治体が多いです。平面図通りにできているか・衛生への配慮の確認・院内掲示の確認などを実施します。

 

(2)厚生局

厚生局は都道府県や政令指定都市ごとに設置されている厚生労働省の地方支分部です。ここでは主に保険診療の手続きや施設基準の手続きを行います。

 

主な実施事項と時期は以下1点です。

〇厚生局開設届:

保健所開設届提出後に保健所の開設届の写し・保健医登録票などと一緒に提出します。毎月が締め切りあるので注意しましょう。例えば東京都だと、毎月10日までに提出をすれば翌月1日から保険診療可能となります。

 

9.ホームページ作成など準備

集患をどこまで行うかと何を行うかは、所在地(視認性が良いか)・診療科目などによって考えなければなりません。

方法には大きく分けてアナログの方法(駅看板・チラシのポスティング・挨拶回りなど)とデジタルの方法(ホームページ・リスティング広告・各種ポータルサイトへの登録・SNSなど)があり、ご自身のクリニックにあった選択肢を組み合わせて行うこととなります。

 

10.スタッフの採用

次にスタッフ採用です。ここでは医師を除くコ・メディカルの場合を想定して記載します。

 

(1)時期

開業の2~3カ月前から開始するのが一般的ですが、縁故採用の場合は随時となります。

 

(2)選択肢

大きく分けて、求人媒体系(一定の期間求人を出して固定の掲載料を支払うタイプ)と紹介会社(人材コンサルタントに紹介してもらい、雇用が決まった時点で採用者の年収の20~30%を支払う)に分かれます。時間に余裕があれば、無料の求人媒体から始めて決まらなければ有料の求人媒体、それでも駄目なら紹介会社と進めてみていはいかがでしょうか。

 

11.まとめ

ここまでご覧いただきましたとおり開業は大変な作業です。もちろん詳細の部分は各専門家に意見を求めていくことが重要ですが、数ある選択肢から「どちらが良いか」を聞くにしても、その選択肢を院長先生自身が理解して進めていくことが重要です。本稿がその一助になれば幸いです。