G.C FACTORY編集部

M&A

「分院の作り方」行政手続きについて

目次

✓はじめに

✓分院展開で前提として必要なこと(医療法人化)

✓行政手続きの留意点

✓具体的な手続きとスケジュール

✓終わりに

 

 

日頃、「診療所の分院を作りたいがどのような行政手続きが必要か」というご相談を多くいただきます。そこで、今回は医療法人が分院を作る際の各行政手続きについてまとめました。

 

分院展開で前提として必要なこと(医療法人化)

具体的な手続きに先立ち、まずは前提として医療法人であることが必要です。個人診療所は院長(管理医師)の個人事業であり、個人の確定申告を提出します。この個人事業主の形態では、分院は作ることはできず、例えば名称などで関連を持たせたとしても(例「新宿GCクリニック」と「池袋GCクリニック」のように)それはそれぞれの管理医師が事業主となり、確定申告を行う、別の事業となります。つきまして、分院展開の第一歩は法人化であり、個人クリニック院長の自院を法人化するか、医療法人毎M&Aをするなどが求められます。

 

 

行政手続きの留意点

分院をつくるためには、各行政(都道府県、法務局、保健所、厚生局など)が指定する、必要な手続きの書類作成と提出が必要です。そして、各種手続きによって書式と提出期限が定められています。期限を過ぎてしまうと翌月の申請に持ち越しとなるため、事前に期日を確認し計画的に準備を行う必要があります。

分院をM&Aする場合においてはこの手続きを売り手と買い手で分担し作成する必要があります。M&Aでは1か月ずれるだけでどちらかが経済的に損を被りますし、スタッフや患者にも迷惑がかかります。よって行政と事前相談を行い、漏れや齟齬がないように作成、提出する必要があります。また、定款変更などの認可が必要で時間がかかる手続きはその扱いについて(仮に書類不備で認可が下りなかった際の取り決めなど)双方で合意をする必要があります。その意味ではM&Aを進行させるコンサルタントは行政手続きにも精通していることは重要です。

 

 

具体的な手続きとスケジュール

次に、医療法人化まで終えた買い手側の医療法人が分院を作る際の流れについて記載をします。

 

① 事前相談(都道府県、保健所など)

分院の設立は定款変更事項です。期日内に、スムーズに定款の記載内容を変更し、都道府県の認可を得るために、定款変更認可については都道府県の担当窓口に事前相談が必要です。都道府県によっては、仮申請(②で解説)を事前相談としているところもあります。また、そもそも対面での事前相談を受けていない自治体もありますので、事前に電話で確認をするのが良いでしょう。開設者が相談に行くのも良いですが、医療法人の定款変更に精通している行政書士に依頼をしてしまうのがスムーズです。また、分院設立の定款変更では開業するクリニックの賃貸借契約書、平面図、名称などを提出する必要がありますが、定款変更認可後に保健所から不可と言われないように、定款変更の提出前に保健所にも確認に行く必要があります。

 

 

② 都道府県担当窓口への医療法人の定款変更認可の手続き

都道府県のウェブページに定款変更の流れについて細かく記載があります。以下、例として東京のURLを記載します。

都道府県の定款変更認可の期間は、必要書類の提出から約3ヶ月程度かかります。都道府県やその時の手続き担当者の繁忙具合によっても変わってきまして、弊社の経験では1か月ほどで認可が出た例もありますが、ほとんどは2.5か月~3か月です。事前相談や書類作成期間を含めると、4ヶ月程度の期間を見込んでおくと良いでしょう。やり取りは、事前審査(仮申請という自治体もあります)で各書類を捺印しない状態で提出して、修正点がメールやFAXで戻ってきて、そこを修正すること繰り返して、事前審査の認可後に捺印した本申請を提出します。最近、東京都では仮申請時点でも社員総会議事録は捺印をするように求められます。この辺りも自治体に寄ってルールが異なりますので注意が必要です。

出典:東京都福祉保健局 医療法人運営の手引

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/hojin/uneitebiki.html

 

③ 法務局へ法人変更登記申請の手続き

定款変更の認可がおりたら、法務局へ登記をします。期間は1週間~10日ほどです。登記完了後の登記簿謄本をこの後の保健所の開設許可申請書に添付します。保健所に寄っては、登記を申請した際にもらえる受領証で先に申請の相談に乗ってくださる保健所もあります。原則は手続きが完了した登記簿謄本が必要になりますが、本当に急いでいる際などは相談をするだけしてみてはいかがでしょうか。

 

 

④ 保健所へ分院開設の手続き(例 東京都の場合)

定款変更の認可がおり、登記が完了したら次は保健所です。保健所は都道府県単位ではなく、市町村単位で管轄の保健所が決まっております。保健所の手続きが済めば、その時点で自費診療は実施可能となります。具体的な流れは以下となります。

 

事前相談:開設スケジュール(見込み)、平面図、賃貸借契約書、提出書類等を相談

開設許可申請書提出:東京都内の保健所の標準事務処理期間は15日(土日祝を除く営業日ベース)

書類審査・実査:保健所の担当者による実地調査

開設許可書交付:開設許可申請書の副本は、許可書交付時に一緒に交付される

開設届:開設後10日以内に届出。(エックス線装置を設置する場合は、別途診療用エックス線装置備付届を届出)

以上です。
あくまでも標準的な流れでして、この後の厚生局の締め切りなども踏まえて、保健所への早めの相談が重要となります。場合に寄っては、上記よりも早く進めていただけるようケースもあります。

 

⑤ 厚生局への保険医療機関指定申請等の手続き

次に厚生局です。ここでは保険医療機関指定申請の手続きを行います。よって厚生局に期日通り提出をすれば、翌月月初から保険診療が可能となります。この期日を確認して、間に合うように逆算して行政手続きを進めるのがポイントです。(東京都では毎月10日まで、神奈川県では15日までなど)また、M&Aなどで、既に開業している診療所を医療法人の分院にする場合は、保険診療ができない空白期間が生じないようにするため、指定期日を遡及して指定を受けることが可能です。

厚生局に手続きをすると、その月末から翌月月初には保険医療機関番号が届きます。また、翌月月初に施設基準の締め切りがあるので注意が必要です。

 

 

⑥ その他の所管官庁への各種届出、申請の手続き

必要に応じて、生活保護法や被爆者援護法、結核予防法、労災保険法などによる指定医療機関の指定申請を行います。

 

以上です。

今回は、分院を作るための一般的な診療所で保険診療を行う場合の手続きについての概要をまとめましたが、具体的な必要書類は管轄行政機関ごとに指定されているため、都度確認し対応する必要があります。医療法人が分院診療所を開設するには、医療法人設立時と同様に多くの手続きを経る必要があり、通常数ヶ月を要すことから、スケジュールには余裕をもって計画的に進めることが重要です。

 

ご覧いただいてわかるように、1院目と分院設立の一番の違いは定款変更があるという点です。いつのタイミングで分院設立をしたいのかを逆算して余裕を持った定款変更の提出が必要です。これが更にM&Aの場合には同じくスケジュールに余裕を持つことは重要ですし、遅れた場合や万が一認可を取得できなかった場合の取り決めは必要となります。

 

 

弊社では、経験豊富な専門家と一緒に分院展開のサポートをおこなっており、M&Aのスケジュール作成の際に行政手続きのスケジュールも確認して、ご提案をさせていただいております。分院開設のご希望や、開設計画に対するセカンドオピニオンなど、ご相談がありましたら、お気軽にご連絡ください。

 

 

執筆者:高淵 信行(たかぶち のぶゆき)

コンサルティング事業部 グループリーダー

 

経歴:

国内医療機器メーカー、医師紹介会社、医療系コンサルティング会社、「(株)メディカルノート」コンサルティング事業部設立メンバーを経て、(株)G.C FACTORY 創業第一期メンバーに至る。医療系M&A・新規開業支援業務では、50件以上の成約実績がある。現在、コンサルティング事業部の大黒柱として内外問わず信頼は厚く相談多数。ライフワークはサーフィンと育児。

 

資格:

M&Aシニアエキスパート(事業承継・ M&A エキスパート協会/運営:日本M&Aセンター)