G.C FACTORY編集部

M&A

クリニックの廃業(廃院)とM&Aどちらを選ぶべきか|廃業コストやM&Aの注意点

 

目次

Ⅰ.  はじめに

Ⅱ. クリニック廃業(廃院)にかかるコスト

Ⅲ.  クリニックの廃業(廃院)で必要な手続き

Ⅳ.  廃業(廃院)とM&A(第三者承継)のどちらを選ぶべきか

Ⅴ.   M&A(第三者承継)なら医師・スタッフ・患者・地域にメリットがある

Ⅵ.   終わりに クリニックの廃業(廃院)はやむを得ない場合の最後の手段

 

 

Ⅰ. はじめに

後継者がいないと「クリニックを廃業(廃院)するしかない」と思い詰めてしまいがちです。しかし、最近ではM&A(第三者承継)という選択肢を選ぶ医師も増えてきています。クリニックの廃業にかかるコストや必要な手続き、廃業ではなくM&Aを選んだ場合の注意点について、分かりやすく解説します。

 

 

Ⅱ. クリニックの廃業(廃院)にかかるコスト

クリニックの廃業(廃院)には、合計で数百万円から1,000万円超に及ぶ多額の廃業コストがかかることが多いです。たとえば次のようなコストが発生します。

 

・不動産の取り壊し費用

・内装の原状回復費用

・不動産の賃貸借契約の解約金や違約金

・医療機器や医薬品の処分費用

・従業員への退職金や解雇予告通知の支払い

・登記費用

・残債の返済、リース代の清算

・税理士や社労士、司法書士への行政手続きなどの報酬

・初診を断り、患者さんを外に紹介をする間の赤字

 

クリニックの廃業コストは、次のような項目に応じて変わってきます。

 

・不動産を所有しているか、借りているか

・借りている場合の解約金や違約金の有無

・医療機器は売却が可能か、処分するしかないのか

・常勤スタッフの人数や勤続年数

・退職金規定の有無

・中退共への加入の有無

・顧問契約をしている税理士が対応できる業務の範囲

 

一般的に、不動産の取り壊し費用や賃貸の場合の原状回復費用だけでも、数百万円はかかります。また、長年勤めた常勤スタッフが数人いる場合、退職金の合計額も数百万円に及ぶことがほとんどです。これらの積み重ねで、クリニックの廃業コストは1,000万円を超えることも珍しくありません。

 

 

Ⅲ. クリニックの廃業(廃院)で必要な手続き

クリニックを廃業する場合、必要に応じて、次のような機関に届出を提出しなければなりません。

 

・保健所

・厚生局

・支払基金(国保、社保)

・都道府県

・税務署

・都道府県税事務所

・医師会

・医師国保

・年金事務所

・労働基準監督署

・ハローワーク

など

 

手続きを専門家に依頼する場合、報酬を支払う必要があります。自分で手続きをすれば、廃業コストは抑えられますが、廃業準備でただでさえ忙しい時に、手続きのための時間を確保するのは至難の業です。また、万一手続きに漏れや誤りがあった場合、廃業後にトラブルになってしまう可能性もあります。

 

クリニックの廃業手続きは、一般企業と比較しても複雑で、特殊性が高いことから、対応してくれる専門家を探すのも一苦労です。精神的にも金銭的にも、大きな負担があることを覚悟しておきましょう。

 

 

Ⅳ. 廃業(廃院)とM&A(第三者承継)のどちらを選ぶべきか

「後継者がいない」という理由で、クリニックの廃業(廃院)を考える医師はたくさんいます。しかし、正直に申し上げて、廃業にメリットはありません。手続きが複雑なうえ、多額の廃業コストが発生します。手元に残るお金が1,000万円前後少なくなると、勇退後の生活のゆとりにも影響を及ぼします。

 

このような背景から、最近ではM&A(第三者承継)がクリニックの出口戦略として当たり前の選択肢になりつつあります。「廃業かM&Aか」ではなく、「何らかの事情でM&Aがうまくいかなかった場合、やむを得ず廃業を選択する」というのが順当な考え方です。

 

「廃業しかない」と思い詰めていらっしゃる方は、視野を広げてM&Aを検討してみてください。

 

 

Ⅴ. M&A(第三者承継)なら医師・スタッフ・患者・地域にメリットがある

M&A(第三者承継)とは、親族やスタッフ以外の第三者を後継者とし、クリニックを売却する手続きのことです。売り手・買い手双方の希望をすり合わせ、お互いに納得して初めて、M&Aが成立します。

 

M&Aを選ぶことは、医師やその家族にはもちろん、スタッフや患者、地域にも大きなメリットをもたらします。続いて、M&Aを選択した場合のそれぞれのメリットを見ていきましょう。

 

●院長(又は医療法人の売主)にとってのM&Aで売却するメリット

院長にとってのM&Aのメリットは次の通りです。

 

・廃業コストを負担しなくてすむ。

・廃業にまつわる複雑な手続きをしなくてすむ。

・売却益を得ることができ、勇退後の生活にゆとりが生まれる。

・家族が承継を希望していない場合、喧嘩や摩擦がなくなる。

・スタッフや患者のことなど、心配事が少なくてすむ。

 

廃業コストがかからないことに加え、M&Aでは、売却益を得ることができることもあります。売却益を受け取ることができれば、勇退後もゆとりを持って生活できるでしょう。

 

M&Aでしっかり売却益を確保するには、下準備や交渉が重要です。クリニックのM&Aを専門とするM&A仲介会社に依頼し、M&Aを進めていきましょう。

 

家族間の摩擦が減ったり、スタッフや患者の今後を心配しなくてすんだりするのも、M&Aのメリットです。大切なクリニックを信頼できる相手に引き継ぎ、穏やかな気持ちで勇退後の生活を送れるでしょう。

 

●スタッフにとってのM&Aのメリット

スタッフにとってのM&Aのメリットは次の通りです。

 

・M&A後も雇用契約は引き継がれるため、新しく職探しをしなくてすむ。

・慣れ親しんだ職場で、自分の経験やスキルを活かしながら、引き続き患者対応ができる。

 

基本的に、M&A後も雇用契約は引き継がれます。スタッフの雇用を守ることができるのも、M&Aのメリットです。

 

廃業する場合、スタッフにいつ廃業を伝えるかというのも難しい問題です。直前に伝えると、余裕を持って次の職場を探すことができず、スタッフに迷惑を掛けてしまいます。かといって、早めに伝えすぎると、スタッフがすぐに転職してしまい医院運営に支障をきたすといったことにもなりかねません。

 

M&Aなら、このような悩みもなく、スタッフも慣れ親しんだ職場で仕事を続けられます。

 

●患者・地域にとってのM&Aのメリット

患者・地域にとってのM&Aのメリットは次の通りです。

 

・通い慣れたクリニックに引き続き通うことができる。

・信頼する医師からの引き継ぎを受け、安心して医療を受け続けることができる。

・地域医療の質を保つことができる。

 

勇退を考え始めたものの、長年通院してくれている患者のことを想うと、なかなか廃業を決心できないという医師も多いでしょう。しかし、無理して診療を続けた結果、突然自分自身が倒れてしまうと、患者にも迷惑や心配をかけてしまいます。

 

元気なうちにM&Aを決心し、信頼できる医師にクリニックを引き継ぐことが、結果的に患者を守ることにもつながるのです。

 

また、クリニックが存続することで、地域の医療提供体制を維持できるのもメリットといえます。

 

 

Ⅵ. 終わりに クリニックの廃業(廃院)はやむを得ない場合の最後の手段

クリニックの廃業(廃院)は、簡単なことではありません。廃業にあたり、多額の廃業コストもかかります。「後継者がいないから廃業するしかない」という考えにとらわれず、広い視野でクリニックの出口戦略を検討することが大切です。

 

クリニックの出口戦略には、親族内承継・従業員への承継・M&A(第三者承継)という3つの選択肢があります。親族内承継や従業員への承継が難しかったとしても、M&Aなら誰しも検討する余地があります。

 

大切なクリニックを第三者に引き継ぐという決心は、簡単にできるものではありません。M&Aに慎重になる医師が多いのも、当然のことです。「実際に買い手を探してみて、信頼できる相手が見つかった場合のみM&Aをする」という考え方でもいいのです。

 

勇退を考え始めたなら、早めにM&Aに関する情報収集を始め、必要に応じて専門家に相談しましょう。相談する中で、自分のクリニックに最もふさわしい出口戦略の形がおのずと見えてくるはずです。

 

 

執筆者:金子 隆一(かねこ りゅういち)

(株)G.C FACTORY 代表取締役

 

経歴:

国内大手製薬会社MR、医療系コンサルティングファーム「(株)メディヴァ」、「(株)メディカルノート」コンサルティング事業部責任者を経て、2020年4月、(株)G.CFACTORY設立、現在に至る。医療系M&A、新規開業支援、運営支援において実績多数。

 

実績・経験:

・開業支援(約50件)、医療機関M&A(約40件)、医療法人の事務長として運営を3年間経験

・複数の金融機関、上場企業におけるM&A業務顧問に就任

・大規模在宅支援診療所の業務運営の設計及び実行責任者を兼任