G.C FACTORY編集部

マーケティング

クリニックにおけるWEBマーケティングの基礎

Ⅰ.はじめに

近年、様々な業界でマーケティング手法としてWEBマーケティングが主流となりつつあります。当然クリニックにおいても、その生き残りのためにWEBマーケティングで集客をすることが重要になってきています。またM&Aなどでクリニックを引き継ぐ際、売り手の院長は高齢でありWEBマーケティングをそこまで行っていないことが多いです。よってこのWEBマーケティングが経営改善の多くの要因となることが多いです。

 

本コラムでは、WEBマーケティングについて、その基礎であり主たる方法となる「SEO」と「MEO」、「リスティング広告」についてそれぞれの特徴や違いを中心に、分かりやすく解説します。

 

まず、それぞれの説明をする前に、以下の画像をご覧ください。

例えば、Googleで「渋谷 内科」と検索したとき、大きく3つの構成に分かれて検索結果が表示されます。まず、最上部に表示されているのが「広告」部分です。ここに表示をさせる広告手法を「リスティング広告」と呼びます。そして、2番目に地図とともにクリニックの情報が掲載されているのが「Googleビジネスプロフィール」であり、ここで上位表示させることをマップエンジン最適化の略で「MEO(Map Engine Optimization)」と言います。3番目に表示されているのが「一般検索」の部分であり、ここで上位表示させることを検索エンジン最適化の略で「SEO(Search Engine Optimization)」と言います。

以下では、それぞれについて解説をしていきます。

 

【参考画像】

 

Ⅱ.SEOとは

まずはSEOです。SEO (Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)とは、Webサイトの内容をGoogleやYahoo!などの検索エンジンが理解、評価しやすいように最適化することをいいます。これによって、GoogleやYahoo!などの検索エンジンでキーワードが検索されたときに、自身のWEBサイトが上位に表示され、ユーザーにクリックしてもらえる可能性が高まります。どんなにWEBサイトの内容が優れていても、検索結果の上位に表示されていなければ、ユーザーに見てもらえずWEBサイトを作っている意味が失われてしまうので、上位に表示させることは非常に重要です。そして、SEO対策とは、検索結果で自身のWEBサイトが上位に表示されるように行う様々な対策のことを指します。

このSEO対策を行うメリット、デメリットのうち主なものは以下となります。

 

1. メリット

・費用がかからない

広告とは異なり、SEO対策の専門会社に発注をしない限り、表示やクリックに応じて費用が発生せず、適切にSEO対策を行えば、WEBページの上位に表示されることができます。

 

・ユーザーからの信頼を得やすい

検索結果の上位に表示されるサイトは、検索エンジンから高評価を与えられているということの証であるため、そのことを認知しているユーザーから信頼を得やすいです。また広告の場合は検索結果の表示の横に「広告」の文字が付きます。中にはそういった広告を敬遠する人もいるので、SEOでの上位表示は信用をいただきながら多くの人の目に触れられる可能性が高い方法と言えます。

 

2.デメリット

・効果が表れるまで時間がかかる

検索結果の上位に表示させるまでには、良いサイトを作成する時間、修正をする時間、検索エンジンに評価されるまでの時間など、手間と時間が多くかかってしまいます。即効性が無く、開業や継承したたばかりのタイミングなど、すぐに上位に表示をさせたい場合には不向きとなります。

 

・検索エンジンのアップデートの影響を受ける

検索エンジンでは、上位表示させるアルゴリズムが不定期にアップデートされるため、それまで上位表示されていたサイトが急に上位に表示されなくなることもあります。長期的に根気よく行っていくことが求められます。

 

Ⅲ.MEOとは

MEOとはMEO(Map Engine Optimization:マップエンジン最適化)といい、Google Mapなどのマップ検索エンジンにおいて、店舗、企業、クリニックなどの情報を検索エンジンが理解、評価しやすいように最適化することをいいます。これによって、「地域名 クリニック」「地域名 内科」といったローカル検索がされたときに、クリニックの情報が上位に表示され、ユーザーに見てもらえる可能性が高まります。ローカル検索というのは、ユーザーの位置情報や地域に関するキーワードに合わせた結果を表示することです。例えば、「渋谷 内科」で検索したり、場所に関するキーワードを入れていなくても、検索者の位置情報を用いて「クリニック」と検索したりしたときに表示されます。

MEO対策は、マップエンジン上の検索結果で店舗や企業の情報が上位に表示されるように行う対策のことをさします。MEOのメリット、デメリットは以下となります。

 

1.メリット

・費用がかからない

SEO同様に無料で始めることができ、また、表示やクリックに応じて費用が発生しません。そしてSEO同様に専門の業者に発注をすると費用がかかりますが、競合が少ない地域などの場合は比較的お金や工数をかけずとも上位に表示されることもあります。

 

・目に留まりやすい

MEOの表示部分は、SEOの表示より上に表示され、また地図情報とともに表示されるため、ユーザーの目に留まりやすく、ユーザーがクリックすることを期待できます。

 

・競合が積極的ではない可能性がある

今、ホームページは多くの医療機関が持っており、その点でSEOは競合が多いですが、MEOは、その存在を理解していなかったり、口コミを書かれたりすることを恐れて、Googleビジネスプロフィールをしっかりと登録していない医療機関などもあるため、競合はSEOより少ない傾向にあります。

 

2. デメリット

・悪い口コミも表示される

Googleビジネスプロフィールには口コミの記載ができます。ユーザーの口コミは、高評価のものだけでなく、低評価のものや悪意のあるものも(過度で無ければ)表示されてしまうため、それらの口コミに真摯に返答するなど対処をしないかぎり、逆効果になってしまう可能性があります。

 

・効果が表れるまで時間がかかる

一般的には、SEO対策ほどではないといわれますが、MEOの場合も対策をしてから効果が表れるまで時間がかかってしまいます。

 

Ⅳ.リスティング広告とは

リスティング広告は、「キーワード連動型広告」とも呼ばれ、あるキーワードを検索した時に、その検索結果に連動して表示される広告の総称です。原則、掲載されるだけでは広告費は発生せず、ユーザーにクリックされるごとに費用がかかります。

 

1.メリット

・検索結果の上部に表示できる

リスティング広告は検索結果の上部に表示されるため、ユーザーの目に留まりやすく、クリックされる可能性が高くなります。

 

・即効性がある

SEOやMEOとは異なり、審査に通ってからすぐに検索結果の上部に表示させることができるため、即効性が期待できます。

 

・予算などを細かく設定できる

予算を細かく設定することができるので、思いのほかクリックされて高額の請求がくるといったことはありません。また表示回数やクリック回数などのデータを確認することができ、いくら費用を使ってどの程度の効果が出たのか分析できるため、改善がしやすいです。

 

・特定のユーザーを狙い表示できる

リスティング広告は、どのキーワードが検索されたときに広告を表示させるかを設定できるため、見込みの高いユーザーに訴求することができます。また検索者の所在地や検索の時間帯なども細かく設定することができる為、例えば「中央区 内科」などのキーワードを設定した際に、東京都の中央区を意味していれば、相模原市中央区の人は除外するために、エリアを都内在住者に設定することができます。

 

2.デメリット

・費用がかかる

SEOやMEOなどと異なり、リスティング広告はクリック回数に応じて費用がかかります。また単価を高額に設定したユーザーから上位に表示されるため、人気のキーワードはクリック単価高く、費用が高額になってしまう可能性があります。

 

・広告を避けるユーザーがいる

リスティング広告は検索結果の上部に表示されますが、広告だとわかってしまうため、広告を嫌うユーザーには逆効果となってしまいます。

 

・広告運用に知識が必要

効果的に運用するためには、どのキーワードを設定・除外するのか、広告文、入札単価はどうするのかなど細かな調整が必要であり、ある程度のノウハウが求められます。この設定を専門の業者に依頼すると、一般的には予算の20%前後の委託料が更にかかってしまいます。

 

Ⅴ.実際の対策方法

ここからは簡単ではありますが、イメージを持っていただくために、それぞれの対策方法について、例を記載します。

 

1.SEO

まずは、SEOです。SEOは何か設定を行うというよりはコツコツとホームページを作り込んでいくこととなります。

 

・検索キーワードを多く盛り込む、文字数をしっかり確保する

例えば「糖尿病」というキーワードで上位に表示させたいとなりましたら、ホームページの中に、「糖尿病」というキーワードを多く盛り込んでいく必要があります。しかし、ただ単に糖尿病と連続で入力しても効果はなく(むしろ逆効果)、有益な情報を提供して、その中にキーワードを入れていく必要があります。ホームページの中に疾患に関するページを設けているクリニックや、ブログページを作成して疾患情報を記載しているホームページが多くあるのは、このためとも言えます。また特にデザインなどにこだわるトップページなどで多い事例ですが、トップページの診療科目などを画像で作ってしまうと、文字として評価されないのでもったいないです。この「画像」というのは、マウスでスクロールして、コピーできるかどうかで見分けることができます。(画像の場合はスクロールできないです)

 

・内部に関連度の高いリンクを貼る、逆にリンクを貼ってもらう

 リンクを貼るとは、他のサイトのURLを貼ったり、バナーを作ることです。関連度の高いWEBサイトのリンクを貼ったり、逆に、関連する評価の高いWEBサイトに自院のホームページのリンクを貼ってもらうと評価されると言われています。またリンクを貼ってもらうのは単純にそこからの流入でクリック数の増加に繋がりますので、様々なポータルサイト(クリニック情報をまとめているサイト)に登録をしたり、連携している医療機関のホームページにリンクを貼ってもらうこと等が有効です。

 

・専門性や独自性を高くするなど内容の質を上げる

 基本的に、googleに質の高いサイトと評価をされると上位に表示をされます。その評価を得る軸として、「専門性」や「独自性」があります。例えば先程の例の糖尿病で上位表示をするとなると、色々な診療科目の内容や、クリニック事業と関係ないブログの記事がたくさんあるサイトよりも、糖尿病についての内容に特化しているサイトの方が評価をされやすいと言われています。また、他のサイトに記載があるものをそのままコピーして貼るなどはむしろ低評価となり、先生が自分の言葉や知識で解説をしたサイトや記事が評価される傾向にあります。その際に、院長先生の写真や略歴なども載せると更に良いと言われています。

 

・WEBページの読み込み速度を上げる

 同じく、質の高いサイトという面で、なかなか開かれないサイト(重たいサイト)も評価されにくいと言われています。画像の解像度であったり、トップページを動画にしたりする場合は注意が必要です。先程の、文字が画像になっているという点やこの読み込みなどの点に関しては、専門業者で無いと修正が難しいと思います。その点では、最初にホームページ作成を発注する段階で、この記事に記載のある基本的な内容くらいは理解をしているホームページ業者さんに発注するのが良いと思います。(重たい動画が組み込まれたトップページや画像ばかりのホームページを作っても、上位表示されずに埋もれてしまっては意味がありません)

 

以上です。今回の改善案は一例であるという点と、こういった評価の基準も常に変化をしている点はご留意いただきつつも、ご自身の開業エリアで1番上に表示されているクリニックのホームページを、上記のポイントを参考にご覧ください。恐らくこれらのポイントで優れていることと思います。

 

2.MEO

次にMEOです。

・写真を増やす

Googleビジネスプロフィールの写真の枚数も重要な要素と言われています。内容としては院長先生の写真に加えて、可能ならばスタッフさんとの集合写真や内観、外観などもあると良いです。あまり修正などをせずに解像度の高い写真を掲載すると良いです。

 

・住所などの記載の一致

ホームページ内に記載をされている住所や電話番号とGoogleビジネスプロフィールの住所、電話番号を一致させる必要があります。○○丁目○○番地などを〇-〇などと記載をしてしまう等、建物名の表記などに注意ください。

 

・クリニック情報を充実させる

上記の住所や電話番号の他に、診療時間や休診日などのクリニックに関する情報を充実させます。こういった情報は最新の情報に保つことが重要です。変更が生じた際などには注意が必要です。

 

・口コミ数(できれば良い口コミ)を増やす

口コミの数が多いとMEO上は良いと言われています。また、良い口コミが多いと閲覧した人が来院に繋がることになります。一方で、知り合いなどに頼んで、わざと高評価で口コミを入れることに関しては慎重になる必要があります。場合に寄っては掲載停止になる可能性もあるからです。また、少しわかる人が見ると、サクラとわかってしまい逆効果になってしまう恐れもあります。口コミをいただいた際に、しっかりと返事を書いたり、苦言に対してはお詫びとともに改善したことを示すなどを行い、応援したくなる印象を与えて自然と口コミが増えるようにしていくことが重要です。  

 

3.リスティング広告

リスティング広告は、予算をつけて広告を出すため、課金をすれば上位に表示はされます。その為、重要なことは、広告費を効率的に結果につなげることです。その為には以下のようなポイントが重要です。

 

・キーワードの精査

1クリック毎に課金をされる為、どの検索キーワードに対してリスティング広告を出すかの選定は非常に重要となります。そのため、毎月それぞれのキーワードの費用対効果を確認する必要があります。最終的な目標を定め(例えば予約画面へのクリック、スマートフォンでの電話番号へのタップなど)、この目標への到達数をCV(Conversion)といい、その率であるCVR(Conversion Rate)を計測していきます。例えば、「『渋谷区 内科』のキーワードでクリックしてきた人は○○件コンバージョンして、CVRは○○%」のような形でキーワード毎に算出していき、広告に投下した費用と比較して効果的なキーワードを選定していきます(CPC:1クリックに対してかかった広告費)。これらの数字は時期や競合の予算配分などに寄って変わってきますので、定期的に数値を確認していく必要があります。こういった数字はgoogle広告などにてご自身で簡単に確認できますが、専門の会社に頼むと多くはこういった数字をレポートにして報告してくれます。

 

・エリア、時間の精査

上記のキーワードの精査と少し被るのですが、リスティング広告では広告表示させる時間や地域も選ぶことができるので、例えば予約が電話予約だけのクリニックなどでは、診療時間だけ広告表示させるようにするなどの対応をしたりすることがあります。

 

・広告見出しの精査

広告として表示される見出しも重要です。基本的には可能な範囲で字数を多くする方が良いと言われています。他の広告よりも幅を取って目立つようになるためです。また、いくつかのパターンを作って、どの場合が効果的かを検討するのも良いです。

 

Ⅵ.おわりに

本コラムでは、SEOとMEO、リスティング広告を中心にWEBマーケティングの基礎的な部分を解説していきました。これら3つにはそれぞれメリット・デメリットがあり、どれに注力し運用していくのかなど、自身のクリニックに合ったWEBマーケティングを行う際に本コラムを参考にしていただけたら幸いです。

またそれぞれの対策方法は今回記載したもの以外にも多岐に渡るとともにケースバイケースでもあります。弊社は医療機関のWEBマーケティングの支援も積極的に行っており、多くの実績があります。お気軽にご相談いただければ幸いです。

 

 

 

執筆者:金子 隆一(かねこ りゅういち)

(株)G.C FACTORY 代表取締役

 

経歴:

国内大手製薬会社MR、医療系コンサルティングファーム「(株)メディヴァ」、「(株)メディカルノート」コンサルティング事業部責任者を経て、2020年4月、(株)G.CFACTORY設立、現在に至る。医療系M&A、新規開業支援、運営支援において実績多数。

 

実績・経験:

・開業支援(約50件)、医療機関M&A(約40件)、医療法人の事務長として運営を3年間経験

・複数の金融機関、上場企業におけるM&A業務顧問に就任

・大規模在宅支援診療所の業務運営の設計及び実行責任者を兼任