G.C FACTORY編集部

マーケティング

M&Aで「悪い口コミが気になる」時|クリニックの最新マーケティング施策

Ⅰ.はじめに

M&Aで既存のクリニックを引き継いで開業する「承継開業」。いい候補先クリニックを見つけたものの、「Googleの悪い口コミが気になる……」と悩んでいる先生もいるのではないでしょうか?医療業界でも重要性の増しているWebマーケティングの観点から、考えられる対応策を解説します。

 

Ⅱ.Googleの悪い口コミは消せるのか?

最近では、飲食店を探す時など多くの場面で、Googleの口コミを見る人が増えてきています。クリニックに関しても同様で、あまりに星の評価が低かったり、批判的な口コミが多かったりすると、来院数に影響が及ぶこともあります。Googleの口コミの影響力は、年々高まっているといえるでしょう。

M&Aで既存のクリニックを引き継ぐ「承継開業」の場合、「新規開業」とは異なり、すでに「悪い口コミ」がついてしまっているケースがあります。その他の条件が良くても、「悪い口コミ」の影響力を数字で測ることは難しいため、気にかかってしまうことも多いでしょう。

結論をお伝えすると、Googleの悪い口コミは、よほどのことがない限り消せません。他の多くの口コミサイトや掲示板とは異なり、削除依頼をしても、応じてもらえないことが多いです。

 

Googleでは「口コミの削除」を依頼できますが、実際に削除される可能性があるのは、Googleのポリシーに違反している口コミだけです。たとえば、次のようなケースです。

 

・同じアカウントからスパムのように繰り返し口コミが投稿されている。

・全く関連性のない政治的な主張が含まれている。

・アルコール、ギャンブル、タバコ、銃、成人向けサービスなど制限の対象となる内容が含まれている。

・著作権など他社の法的権利を侵害する可能性がある。

・違法行為や残虐描写、暴力表現、差別表現、わいせつ表現が含まれている。

・脅迫を匂わせている。

・競合他社への不当に低い評価や批判、自分の店やサービスに対する評価。

 

上記のような内容でない限り、クレームのような口コミであっても、削除される可能性はほぼありません。なお、自分の店やサービスに対する評価も規制対象なので、悪い口コミがあるからといって、それを薄める目的で自ら高評価をつけるのは危険です。

 

Ⅲ.Googleの悪い口コミへの正しい対処法

 

悪い口コミを書かれた場合、打つ手はないのでしょうか?悪い口コミへの対策として、3つの対処法が考えられます。悪い口コミが気になっているなら、承継開業後、早い段階で手を打ちましょう。

 

●クリニックから返信する

Googleビジネスプロフィールの機能を使えば、口コミに対して返信ができます。クリニックからの返信があると、口コミを見た人の印象は大きく変わります。返信する時は、的を射た批判に対しては真摯に受け止めるコメントをし、支離滅裂な批判に対しては言い訳をせず一言謝罪するのが効果的です。

承継開業の場合、伝え方に迷うこともあるかもしれません。ただ、良い面も悪い面も含めて過去を引き継ぐのが承継開業です。身に覚えのないことでも、「不快な思いをさせてしまい申し訳ございません。また機会があればご来院お待ちしています」の一言があるだけで違います。

返信があると、口コミを見た人は「嫌なコメントにも1つ1つ返信するなんて誠実なクリニックだ」「悪い口コミを書いた人はクレーマーだったのかも」という印象を抱くようになります。

 

●信頼関係のある患者に相談する

開業地が勤務していた病院からそこまで離れていない場合、勤務医時代の患者が続けて来院してくれるというケースもあるでしょう。そのような信頼関係のある患者に、口コミについて相談してみるのも1つの方法です。

「このような口コミが投稿されていて困っている。もしよかったら、率直な感想でいいので、口コミを投稿してもらえないだろうか」と相談してみてください。

「開業を応援したい」という気持ちがありつつ、具体的にどうすればいいかわからない患者もたくさんいます。負担をかけるようで気が引けるかもしれませんが、病院が変わってもついていくほど信頼している先生からの頼みは患者としても嬉しいものです。

強要するわけでもなければ高評価を依頼するわけでもないので、思い切って口にしてみましょう。

 

Ⅳ.マーケティング上NGな対処法

 

Googleの口コミへの正しい対処法をお伝えしました。続いて、マーケティング上マイナスになる対処法を2つご紹介します。

 

●身内でサクラ投稿をする

サクラ投稿はGoogleのポリシーに違反する可能性があります。GoogleはGoogleマップなどの情報から、ユーザーの行動をある程度把握しています。そのため、サクラ投稿を見破られてしまう可能性があります。もしサクラ投稿と見破られたら、アカウント停止などペナルティが課されるリスクがあります。

サクラ投稿は、口コミを見た人にも何となく感づかれてしまうことも多いものです。サクラ投稿はやめましょう。

 

●口コミ対策業者に依頼する

Googleの口コミに悩む事業者が増えたことで、「口コミを消します」「高評価の口コミを投稿します」といった電話営業をしている事業者も存在します。悪い口コミに悩んでいると、つい耳を傾けたくなる時もあるでしょう。

しかし、先ほどもお伝えした通り、口コミを消すことは簡単ではありません。また、高評価の口コミを投稿しても、サクラ投稿とみなされれば、ペナルティが課されるリスクがあります。このような営業は無視して、耳を貸さないことが大切です。

 

Ⅴ.Webマーケティングの第一歩はホームページ充実

 

クリニックを選ぶ際に、患者はGoogleの口コミだけを見るわけではありません。ホームページや口コミなど複数の情報に触れて、最終的に来院するかどうかを決めます。

悪い口コミが1つ2つあったとしても、ホームページの情報が充実していれば、印象が上書きされる可能性は十分にあります。

院長の顔写真を掲載したり、承継開業にいたった経緯を心のこもった文章で伝えたりして、人柄や診療方針が伝わるようなホームページにしましょう。スタッフが綴るスタッフブログもあると、患者はクリニックの雰囲気を想像しやすくなります。得意なスタッフがいれば、お願いしてみるのもいいでしょう。

 

Ⅵ.クリニックのWebマーケティングで重要な「医療広告ガイドライン」

 

クリニックのWebマーケティングを考えるなら、「医療広告ガイドライン」を押さえておく必要があります。医療広告ガイドラインとは、厚生労働省が定めた医療機関の広告に関する取り決めのことです。

チラシやホームページ、ポスター、演説などすべてにおいて、医療広告ガイドラインに違反すると、是正命令や罰則等の対象になるため注意してください。今回は、特に注意しておきたい点をいくつかピックアップしてご紹介します。

 

●虚偽広告

たとえば、次のようなケースが虚偽広告に該当します。

 

・ 絶対安全な手術です!

・ 「どんなに難しい症例でも必ず成功します」

→絶対安全な手術等は、医学上あり得ないので、虚偽広告となる。

・ 加工・修正した術前術後の写真等の掲載

→効果があるかのように見せるため加工・修正した術前術後の写真等は、虚偽広告となる。

・ 「一日で全ての治療が終了します」(治療後の定期的な処置等が必要な場合)

→治療後の定期的な処置等が必要であるにもかかわらず、全ての治療が一日で終了するといった内容の表現を掲載している場合、虚偽広告となる。

・「○%の満足度」(根拠・調査方法の提示がないもの)

データの根拠(具体的な調査の方法等)を明確にせず、データの結果と考えられるもののみを示すのは、虚偽広告となる。また、非常に限られた患者等を対象に実施された調査や謝金を支払うことにより意図的に誘導された調査の結果など、公正なデータといえないものも、虚偽広告となる。

 

●比較優良広告

医療機関では、他院と比較して優良だと示す広告が禁止されています。たとえば、次のようなケースが比較優良広告に該当します。

 

・肝臓がんの治療では、日本有数の実績を有する病院です。

・当院は県内一の医師数を誇ります。

・本グループは全国に展開し、最高の医療を広く国民に提供しております。

・「芸能プロダクションと提携しています」

・「著名人も○○医師を推薦しています」

・著名人も当院で治療を受けております。

 

●誇大広告

虚偽でなくても、事実を誇張した表現は、医療機関の広告では禁止されています。たとえば、次のようなケースが誇大広告に該当します。

 

・ 知事の許可を取得した病院です!(「許可」を強調表示する事例)

→病院が都道府県知事の許可を得て開設することは、法における義務であり当然のこと。知事の許可を得たことをことさらに強調して広告し、あたかも特別な許可を得た病院であるかの誤認を与える場合、誇大広告となる。

・医師数○名(○年○月現在)

→示された年月の時点では、常勤換算で○名であることが事実であっても、その後の状況の変化により、医師数が大きく減少した場合には、誇大広告として扱うことがある。

・比較的安全な手術です。

→何と比較して安全かが不明なので、誇大広告となる。

 

●患者の体験談・口コミ

医療機関のホームページなどで、患者の体験談や口コミを掲載することは禁止されています。患者の体験談は、患者の個々の状態等で異なるからです。第三者が運営する口コミサイトや患者個人のSNSに投稿された内容については、規制の対象にはなりません。

 

Ⅶ. おわりに

 

今の時代、何かを選択する時に、Googleで検索したりSNSの投稿を見たりするのは当たり前になりつつあります。Webマーケティングの重要性は今後ますます高まっていくでしょう。M&Aで承継開業したなら、クリニックのWebマーケティングにも注力してください。

 

執筆者:金子 隆一(かねこ りゅういち)

(株)G.C FACTORY 代表取締役

 

経歴:

国内大手製薬会社MR、医療系コンサルティングファーム「(株)メディヴァ」、「(株)メディカルノート」コンサルティング事業部責任者を経て、2020年4月、(株)G.CFACTORY設立、現在に至る。医療系M&A、新規開業支援、運営支援において実績多数。

 

実績・経験:

・開業支援(約50件)、医療機関M&A(約40件)、医療法人の事務長として運営を3年間経験

・複数の金融機関、上場企業におけるM&A業務顧問に就任

・大規模在宅支援診療所の業務運営の設計及び実行責任者を兼任