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医療法人のM&Aでは持分あり/なしに要注意!メリット・デメリットとは

 

M&Aを考えるなら知っておきたい、医療法人の持分あり・なしの違い。この記事では、医療法人の持分あり・なしの意味と、M&Aにおける影響、買収側からみたメリット・デメリットをわかりやすく解説します。医療法人のM&Aを検討中の方はぜひ参考にしてみてください。

 

■医療法人には「持分あり」「持分なし」と大きくわけて2種類がある

社団医療法人には、持分のある医療法人と、持分のない医療法人があります。まずはそれぞれの違いをみていきましょう。

 

「持分あり」の医療法人とは、簡単にいうと、出資者の財産権が認められた医療法人のことです。具体的には、社員の退社時や医療法人の解散時に、出資持分の保有割合に応じて純資産を払い戻すことができます。財産権が認められているというと、出資者にとって有利に思えますが、医療法人の評価額が個人の財産となり、相続税の対象になるということでもあります。そのため、一長一短というのが実際のところです。

平成19年4月1日以後、「持分あり」の医療法人は設立できなくなりました。平成31年時点で、社団医療法人のうち「持分あり」は39,263「持分あり」の方が現状は多いですが、今後設立することはできないため、徐々に減っていくと予想されます。

財産権が認められていること、今後は設立できないことから、「持分あり」の医療法人はM&Aにおいて人気がある傾向があります。

また持分あり医療法人には、「出資持分あり医療法人」のほかに「出資額限度法人」があります。
出資額限度法人とは、払い戻しの際に、払い込み出資額を限度とする旨を定款で定めている法人を言います。

 

 

「持分なし」の医療法人とは、定款に出資持分に関する定めのない医療法人のことです。持分なしの医療法人には、出資持分のない医療法人と基金拠出医療法人とがあります。基金拠出型医療法人では、社員の退社時や法人の解散時に一定の条件を満たせば基金の額の払い戻し請求が可能となります。

「持分なし」の医療法人が設立できるようになってから、まだ10年と少ししか経っていません。そのため、「持分なし」の医療法人のM&A事例は、「持分あり」の医療法人と比べて少ない傾向があります。

 

 

■買収側から見たメリット・デメリット

続いて、買収側から見た場合のM&Aにおけるメリット・デメリットを整理しました。

 

 

「持分あり」の医療法人の出資持分は財産です。M&Aで出資金を譲り受けた場合、払戻(はらいもどし)請求権が認められます。払戻請求権とは、前述の通り出資割合に応じて医療法人から払い戻しを受けられる権利のことです。実際には、この出資の払い戻しができない持分なしの医療法人であっても、計画的に役員報酬や役員退職金を計算して、医療法人に貯めこまないようにすることに寄って代替できます。その意味ではこの払い戻し請求のメリットは薄いように感じますが、例えば、社員総会で他の社員から裏切りをされてしまったとしても、自身が100%出資持分保有をしている社員であれば、払い戻し請求をすることができます。(裏切りの抑止にもなります)その意味では明確に財産として認められていることは、買収側のメリットといえるでしょう。また、今後「持分あり」の医療法人は設立できないため、M&Aでしか手に入れることができません。その意味では、将来今回買収した医療法人の売却を考えた際に、「持分あり」を望んでいる候補者にも紹介が可能になる点はメリットと言えます。

一方デメリットは、出資持分を相続財産に含める必要があり、多額の相続税がかかるリスクがあることです。医療法人は非営利性の観点から、株式会社とは異なり配当が認められていません。そのため、事業の成長とともに、出資金の相続税評価額はどんどん膨れ上がります。結果として、多額の相続税がかかるケースが多発しています。「出資持分あり」の医療法人を買収するなら、相続税対策が必要という点を押さえておきましょう。

 

 

「持分あり」の医療法人と表裏一体の部分で、相続税対策が必要ないという点がメリットです。先述の通り「持分なし」の医療法人でも、理事に入っていれば、役員報酬や退職金としてこれまで積み上げてきた利益を受け取ることは可能です。その意味では、わざわざ「持分あり」を選ばなくても、運用面でカバーは可能といえます。

一方デメリットは、退職金で払い出せない金額が残った場合や、今後退職金の制度や税制に改定が加わった場合です。ただし、制度改定はどうなるか分からないですし、経過措置などもあるはずなので過剰な心配をしてデメリットと考える必要性は低いです。

 

 

 

■総合的な情報をもとにM&Aの意思決定を
結論としては、持分あり、なしどちらもメリット、デメリットがあり、出資金以外の財産状況、後継者に引き継ぐ予定の有無など、状況や考え方によって選ぶべき選択肢は変わってきます。またどちらのデメリットも運用面でカバーをしていくことが可能です。つきましては、重要なことはその特徴を理解しておくことです。持分の有無だけで買収先を判断するのではなく、総合的な情報をもとにM&Aの意思決定をすることが大切です。