G.C FACTORY編集部

資金調達、補助金

事業承継・引継ぎ補助金とは?補助金額・要件・申請手順を詳しく解説

Ⅰ.はじめに

今、多くの中小企業・小規模事業者が後継者不在に悩まされており、政府も事業承継に関する補助事業に乗り出すようになりました。
令和3年度からは「事業承継・引継ぎ補助金」がスタートし、補助対象が拡充されました。
今回は、事業承継・引継ぎ補助金の概要や対象者、補助金額、これまでの制度との違いを解説します。

 

Ⅱ.令和3年度から新しい補助金制度がスタート!これまでとの違いは?

令和3年度の「事業承継・引継ぎ補助金」は、これまであった「事業承継補助金」「経営資源引継ぎ補助金」
が一体となった制度です。また、これまでの「事業承継補助金」は、経営者交替型・M&A型の2類型でしたが、
令和3年度から、創業者支援型が新たに加わり3類型となりました。なお、当該制度における事業の業種において
「医療機関」の補助対象者は、「個人の開業医」のみです。個人の開業医は、要件を満たせば補助金を受け取ることができますが、
医療法人は、事業承継・引継ぎ補助金の補助対象とはならないため、注意が必要です。

「事業承継・引継ぎ補助金」には、「経営革新」と「専門家活用」の2種類があります。
「経営革新」では、引き継いだ経営資源を活用して経営革新に取り組むための費用に対して、
要件を満たす場合、補助金を受け取ることが可能です。「専門家活用」では、事業承継前のデューデリジェンスにかかる費用や、
M&A仲介業者等へ支払う仲介手数料などが補助の対象になります。

 

Ⅲ.事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)

まず、「経営革新」について、3つの類型とその要件、補助金額を説明します。

 

●創業支援型
補助金額の上限:400万円以内(補助対象経費の2/3以内)

創業をきっかけに、引き継いだ経営資源で経営革新に取り組む者が対象です。
また、一定の実績や知識を有していることが求められます。なお、物品や不動産のみを引き継いだ場合は、
経営資源の引継ぎとは認められません。人、資産、情報などの経営資源を一体的に引き継いだ場合が対象です。

 

●経営者交代型
補助金額の上限:400万円以内(補助対象経費の2/3以内)

事業承継をきっかけに、経営革新に取り組む者が対象となります。一定の実績や知識を有していることに加え、
地域経済をけん引する事業であることが求められます。また、承継者には経営経験、
もしくは同業種での実務経験等が必要とされます。
さらに、新規事業の展開もしくは生産性向上の要件を満たす必要があります。

 

●M&A型
補助金額の上限:800万円以内(補助対象経費の2/3以内)

事業再編や事業統合などのM&Aを経て経営革新に取り組む者が対象となります。
一定の実績や知識を有していることに加え、地域経済をけん引する事業であることが求められます。
また、承継者には経営経験、もしくは同業種での実務経験等が必要とされます。
さらに、新規事業の展開もしくは生産性向上の要件を満たす必要があります。

 

 

 

出典:事業承継・引継ぎ補助金Webサイト
https://jsh.go.jp/r2h/assets/pdf/business-innovation-pamphlet.pdf

 

 

●経営革新とは?

どの類型においても要件となるのが、事業を引き継ぐだけでなく、経営革新を行うことです。
たとえば、次のような取り組みが経営革新として認められます。

・新商品や新しいサービスの開発、生産、提供
・商品の新たな生産方式、販売方式、提供の導入
・新分野への進出
・販路拡大や新市場開拓
・生産性向上

 

●地域経済をけん引する事業とは?

経営者交代型とM&A型では、地域経済をけん引する事業であることが要件です。
たとえば次のような事例が、地域経済をけん引する事業として認められます。

・地域の雇用の維持、創出で地域経済に貢献している。
・地域または近隣地域での売上、仕入が多い(インバウンドによる売上も含む)。
・地域の強み(技術、特産品、観光、スポーツ等)を活用している。
・地域経済に貢献するプロジェクトで中心的役割を担っている。

上記に当てはまらない場合においても、事業の成長が地域経済に波及効果をもたらすこと、
地域経済の活性化につながる取り組みを行っていることを示すことができれば、要件を満たしたと事業とみなされます。

 

 

●補助対象となる経費は?

補助対象となる経費は、次の通りです。

<事業費>
・人件費
・店舗等借入費
・設備費
・原材料費
・産業財産権等関連経費
・謝金
・旅費
・マーケティング調査費
・広報費
・会場借料費
・外注費
・委託費

 

<廃業費>
・廃業登記費
・在庫処分費
・解体費
・原状回復費
・移転、移設費用

 

なお、事業費のほか廃業費が発生する場合、補助金額の上乗せ額の上限額は200万円です。(どの類型も共通)。

 

 

Ⅳ.事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)

続いて、「専門家活用」について、2つの類型とその要件、補助金額を説明します。

 

●買い手支援型
補助金額の上限:400万円以内(補助対象経費の2/3以内)

事業再編・事業統合等で経営資源を譲り受け、シナジーを活かした経営革新を行う予定がある者が対象です。
地域経済をけん引する事業であることが求められます。

 

●売り手支援型
補助金額の上限:400万円以内(補助対象経費の2/3以内)

地域経済をけん引する事業であり、事業再編・事業統合等で経営資源を譲り渡す者が対象です。

 

出典:事業承継・引継ぎ補助金Webサイト
令和 2 年度第 3 次補正予算 事業承継・引継ぎ補助金 専門家活用型
【公 募 要 領】(一次公募)Ver.1.0 2021年6月 (https://jsh.go.jp/r2h/assets/pdf/experts-requirements.pdf

 

●補助対象となる経費は?

補助金を受け取るためには、次の要件を満たす必要があります。

・使用目的が補助対象事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
・補助事業期間内に契約、発注を行い支払った経費
・証拠書類等によって金額、支払等が確認できる経費

たとえば、買い手・売り手ともに次のような経費が認められます。なお、補助対象となる経費の下限額は50万円です。

・謝金
・旅費
・外注費
・委託費
・システム利用料

M&A仲介費用(中間報酬または成功報酬)は、委託費に含まれます。補助金の対象となるのは、補助事業期間中に契約と
報酬支払が行われた費用に限られます。

 

 

 

出典:事業承継・引継ぎ補助金Webサイト 
令和 2 年度第 3 次補正予算 事業承継・引継ぎ補助金 専門家活用型
【公 募 要 領】(一次公募)Ver.1.0 2021年6月 (https://jsh.go.jp/r2h/assets/pdf/experts-requirements.pdf

 

売り手の場合、廃業費用も経費として認められます。廃業費が発生する場合、補助金額の上乗せ額の上限額は200万円です。
廃業費には、たとえば次のような費用があります。

・廃業登記費
・在庫処分費
・解体費
・原状回復費

 

●不動産売買のみは対象外

不動産売買のみであると判断される場合、補助金の対象にはなりません。たとえば、次のようなケースがあります。

・最終契約書として、不動産売買契約書のみを締結する。
・売り手が事業を営んでいない個人、または個人事業主で、不動産のみ買収する。
・廃墟や相続物件等の空き家だけを買収、売却する。
・賃貸物件だけを買収、売却する。
・補助対象経費が、不動産売買の経費のみ。

 

 

Ⅴ.申請期間と申請の流れは?

一次公募期間は、令和3年6月11日から令和3年7月12日の18時までです。交付決定日は、令和3年8月中旬予定です。
補助対象となる事業の実施期間は、交付決定日から最長令和3年12月31日までです。交付手続きは、令和4年3月下旬予定です。

※二次公募期間は、令和3年7月13日から令和3年8月13日の18時までです。
(令和3年7月2日に公募申請受付開始予定が公開されたため、交付決定日、補助対象となる事業の実施期間や
交付手続きのスケジュール詳細は、下記中小企業庁および事務局のプレスリリースを参照ください。)
参考:https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2021/210702shoukei.html

 

全体の流れは次の通りです。

 

<経営革新>
1.補助対象事業の確認
2.認定経営革新等支援機関へ相談
3. gBizIDプライムの取得
4.交付申請
5.交付決定通知
6.補助対象事業実施
7.実績報告
8.確定検査補助金交付
9.事業化状況報告等

 

<専門家活用>
1.補助対象事業の確認
2.gBizIDプライムの取得
3.交付申請
4.交付決定通知
5.補助対象事業実施
6.実績報告
7.確定検査補助金交付

 

申請の流れは次の通りです。

1.補助金の内容を理解し、「経営革新の取り組み」あるいは「専門家活用の取り組み」を検討する。
2.行政手続き申請のため、gBizIDプライムのアカウントを取得する。
3.申請に必要な書類を用意する。
4.必要書類を添付し、オンライン申請フォーム(jGrants)から申請する。

アカウント取得には2~3週間かかるため、早めに手続きを始めましょう。

 

Ⅵ.補助金を活用してスムーズな事業承継を

事業承継後、承継開業と同時に最新の医療機器を導入するなど、新たな収益への取り組みをしたいと
考えている方も多いでしょう。要件を満たせば、補助金の対象になるかもしれません。また、事業承継は手続きが複雑で、
法務、税務にかかわるリスクをともなうことも考えられます。専門家を活用し事業承継を行うことによってトラブルを
未然に防ぐことにも繋がります。今回のコラムでご説明してきたように専門家を活用することによって
補助金の活用が可能にもなります。事業承継・M&Aを検討されているということであれば、
今回説明してきた制度の利用をうまく活用できるようご検討ください。

 

当該コラムの出典元:https://jsh.go.jp/r2h(事業承継・引継ぎ補助金事務局)

 

 

 

執筆者:金子 隆一(かねこ りゅういち)

(株)G.C FACTORY 代表取締役

 

経歴:

国内大手製薬会社MR、医療系コンサルティングファーム「(株)メディヴァ」、「(株)メディカルノート」コンサルティング事業部責任者を経て、2020年4月、(株)G.CFACTORY設立、現在に至る。医療系M&A、新規開業支援、運営支援において実績多数。

 

実績・経験:

・開業支援(約50件)、医療機関M&A(約40件)、医療法人の事務長として運営を3年間経験

・複数の金融機関、上場企業におけるM&A業務顧問に就任

・大規模在宅支援診療所の業務運営の設計及び実行責任者を兼任